睡眠時無呼吸

睡眠時無呼吸とは

睡眠呼吸障害SDB(Sleep Disordered Breathing)と呼ばれる睡眠中に起きる呼吸障害の病気のグループがあります。成人では10秒以上呼吸が止まっていると無呼吸と判定し、小児では2呼吸分呼吸が停止すると無呼吸と判定します。呼吸が通常の半分以下になると低呼吸といい、無呼吸と低呼吸が1時間あたり何回起きたかを無呼吸低呼吸指数AHI(Apnea Hypopnea Index)と呼びます。AHIは睡眠時無呼吸の重症度を判断する指標になります。睡眠中に気道が閉塞して呼吸が止まるのを閉塞性睡眠時無呼吸と呼びます。一般に睡眠時無呼吸と呼んでいるのは閉塞性睡眠時無呼吸症候群のことです。SDBにはチェーンストークス呼吸を示す中枢性睡眠時無呼吸や、上気道抵抗症候群、肥満低換気症候群などもあります。

睡眠時無呼吸患者の頻度

米国の大規模調査では眠気の症状がありAHIが5以上のひとは成人男性の4%、成人女性の2%に認められ、眠気の自覚のないひとも含めると男性が24%、女性が9%と報告されています。日本では大規模な調査はされていませんが、男性の3.3%、女性の0.5%という報告があります。日中の過度の眠気は睡眠時無呼吸の症状の一つで、交通事故を起こす危険性が指摘されていますが、眠気を自覚していないこともあります。

閉塞性睡眠時無呼吸の原因

気道の周囲を構成している骨格が小さいひと(顎の小さいひと)、内容物にあたる口蓋扁桃や軟口蓋などが大きいひとは気道が狭くなり、無呼吸を生じやすくなります。太っているひとも気道が狭くなり無呼吸を起こしやすくなります。甲状腺機能低下症、鼻やのどの腫瘍が原因となることがあります。小児では口蓋扁桃肥大、アデノイドが原因のことが多く手術により改善する可能性があります。

症状

激しいイビキ、睡眠中の呼吸停止を家族や友人に指摘されることがあります。日中の強い眠気で診察に来られることがありますが、眠気を自覚していない睡眠時無呼吸のひとが多いといわれています。治療開始後に眠気が改善し、初めて眠気があったと自覚するひともあります。睡眠を制限する実験では、睡眠時間が短くなるほど脳機能のテスト成績が落ちるのに、睡眠時間が短くなっても眠気の自覚は少なかったとの報告があります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に多く認められる症状は朝の咽頭痛、朝の頭痛です。窒息感で目覚めることもあります。夜尿症やインポテンツなどの症状があるひともあります。 

検査

標準となる検査が脳波を記録しながら呼吸などを調べる終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)です。脳波を測定しない携帯型PSGと呼ばれる簡易型の検査もあります。CPAP(持続陽圧呼吸療法)の適応を決めるときには、1時間あたりの無呼吸低呼吸の回数(AHI)が終夜睡眠ポリグラフィで20回以上、あるいは携帯型PSGで40回以上が基準になります。指にセンサーを付けて夜間の酸素の値を測ると無呼吸が有りそうか否かの判定はできます。診断はできませんがスクリーニング検査に使用されます。 

治療

睡眠時無呼吸は生活習慣病、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高めますので睡眠時無呼吸と診断を受けたら治療を受けましょう。治療にはCPAP(持続陽圧呼吸療法)口腔内装置(マウスピース)、各種手術治療減量などがあります。CPAPはほとんどのひとに有用ですが先に述べたように保険治療に制約があります。また通院治療を続けなければなりません。心筋梗塞や狭心症で治療を受けた方では再発予防の効果があると報告されています。口腔内装置は軽症から中等症のひとに有用です。自分の歯が無いか少ないひと、および口の中に病気があるひとは使用できません。手術治療にはいくつもの方法がありますが、軟口蓋形成術という手術があり、条件が揃うと良くなるひとがあります。ただし、入院が必要です。口蓋垂(のどちんこ)をレーザーで切除するLAUPと呼ばれる日帰り手術を勧める施設がありますが、術後に狭窄をおこすことがあるのでお勧めできません。安易に手術を受けるとさらに悪い結果をきたすことがありますので慎重に判断してください。鼻閉がつよいひとは治療の障害となりますので鼻閉の治療も受けましょう。減量は生活習慣病予防のためにも重要です。減量には生活習慣の見直しが必要となります。極端な減量は長期間継続が難しいので計画的に減量するようにしましょう。側臥位での睡眠や口・舌の体操などが有効なことがあります。治療はそのひとにとって向き・不向きがあります。どのような治療が適しているか医師と相談して決めましょう。