第2段 彼女

   私は光のない世界で彼と出会った。もう一度会いたいと彼は言った。言葉ではなく彼が触れた手とどこからか漂ってきた匂いで私はそう理解した。でももそれは何年も待たなければかなわないことで、いくつもの偶然が重ならなければかなわないことと私は知っている。だから私は返事をしなかった。彼ともう一度会えるか私にはわからないし、私には決められないこと。そのときがくるまで、じっと闇の中で待っているしかない。

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